【メイキング】ステッカーブック

2月の新作ステッカーブックの制作過程について詳細に記載します。
キャラクターグッズ制作への思いや、制作過程について皆様にお伝えするとともに、
他の方がグッズ制作される際の一助になれば幸いです。

0. 着想とサーベイ

グッズを作ろうと思ったきっかけは、Twitterで交流のあったoppo-!さんのシールブックです。

参考
縁起物シールブックminne

ご覧ください、この完成度。
このシールブックを昨年11月のデザフェスの際に購入し、ステッカーブック私も作りたいなあ、と漏らしたところ、oppo-!さんが「ぜひ!!」と言ってくださったので、作ることにしました。
oppo-!さんリスペクトです!!

下書きで絵を書き始めるとともに、市販のシールブックやoppo-!さんの作品をじっくり見ました。

夫にこういうの作りたいんだけど~と相談すると、何故シールブックなのか、シートとどう違うのか、と鋭く聞かれます。本質的です。

シート状のシールと比較すると下記が利点です。

  • 完成度が高く見える
  • たくさん入っていてなんだかお得
  • 世界観・テーマを表現しやすい
  • 単価が高い(※ハンドメイドサイトで販売するためには最低500円以上ないと大体のサイトで販売できないため単価が高いことは利点)

逆に、シート状の利点は、単価が安いので手に取りやすいことでしょうか。
初めて自分の作品を見てくださったお客さまは、比較的単価の安い商品を手にとってくださる事が多い(例:ポストカード)ので、裾野を広げる意味ではシートのほうがいいかもしれません。

が、今回は、ステッカーブックを作りたい!がメインテーマだったので、ひとまず作ります。(笑)

1. コンセプト決定

今回は、自分だけが使うことだけではなく、2月下旬のイベントで販売することを見据えて商品を作ることにしました。
2月のイベントにくるお客さまはほとんど大人です。そして鳥好きの方。

すると夫が「大人がシール買うの?僕使わないんだけど。」と、また本質的です。

というわけでまず、大人がシールを購入したり、使うタイミングを考えます。

  • 年賀状に貼る
  • 手紙に貼る
  • プレゼントをするときに袋に貼る
  • かわいいのでシールを使わずに、人にプレゼントする(プチプレゼント)

こんなところが思いつきました。

いまから、年賀状テーマにするにはちょっと期間が空きすぎです。
ひとまず「人に渡すものに貼る・そのものをひとにあげる」タイミングということで「ありがとうを伝える」をコンセプトにすることにしました。

2. 試作

作るために必要なものを揃えつつ、試作して、また揃えてということを繰り返します。

大まかな工程としては、シールをデザインして、シール紙に印刷し、印刷したものをシール加工して、製本する、と想定されました。イラストはFlashで絵を書いた後に、Illustratorでデザインすることにします。

今回必要になる道具や材料はだいたい下記のようになりそうです。

  • 大きめの工具:プリンター、小型カッティングマシン(シールの加工に必要)、裁断機(製本に必要)
  • 材料:表紙用の印刷できる厚紙、シール紙、製本テープ
  • 細かい工具:カッター、ホチキス、カッターマット、ピンセット、消しゴム
  • ソフトウェア:絵を描くもの、カッティングマシンを動かすソフト(カッティングマシン付属)

カッティングマシンはこれを持っています。

さてさて、まず、商品をつくる際の一番の制約事項はどんな形状のものを作るか、です。
これが決まらないとデザインができません。

初めの時点では、A4のシール紙に印刷して切って製本することしか決まっていません。
ただ、小型カッティングマシンを使う場合、正確にカットするために、シール紙にトンボを印刷して、読み取らせてカットするという仕組みを利用しますから、商品の形状がトンボに強く依存します。
トンボ形状も各社異なるでしょうから、カッティングマシンに依存しているとも言えます。

下記が実際のトンボ(■とL)と、カット限界が細い赤線です。実際のカット線は□の内側の赤い曲線たちです。
紙はA4ですが、いくらか狭い範囲にしかシールが作れないことがわかります。

以上の制約と製本の都合上、ページ中央付近で十字に切断して、ページにばらして製本することにしました。
ちなみに、トンボ線でシールを作る工程について、下記を参考にしました。

参考
Illustrator と Silhouette CAMEO 3 を使ったシール作りの手順YOSHIO

製本については、oppo-!さんやすみっコぐらしのシールブックのように天糊で張り合わせる事も考えました。
が、家には破壊神(子供)が居て十分な乾燥時間を設ける事ができないことから、ホチキスで製本することにしました。

とりあえず、シール紙と表紙をカットしてみて、本にする、ということをします。

最初につくったのは画像上側の白い表紙のものです。適当ですがサイズ感やイメージを確認します。
このとき表紙のデザインが浮かんで来ました。また、ホチキスでとめるので、製本テープが必要なこともわかりました。
ホチキスで止められる枚数にも限界があって、表紙+シール紙8枚が限界といったところでした。
8枚なので、4種類×2ページずつにすることにしました。

また、実際にテストカットをして、カットのズレと、製本時裁ち落としを考えてどのあたりまでカットを配置できるかを見ていきます。
上の画像中、下の2つは赤線でカット線とのズレを見たり、製本してみたらシールまで裁ち落としちゃったものです。
以上のようなことをデザインとカット線に反映していきます。

シール紙については、最初手元にあったエーワン社のハイグレードシール紙を利用していました。
しかし、後ろに剥離のためのスリットが入っていて、シールを剥がした後に穴が開く事がわかりました。

そのため、現在は、紙誠株式会社さんのものを使っています。カレンダーケースをいつも買ってる会社さんです。

参考
タックラベル 上質紙 55k紙誠株式会社 SOHOタワー

一番薄いものでしたが、十分厚手でした。
エーワンさんの下記商品より50kだとちょっと薄いかな、70kだと同じぐらいです。値段も紙誠株式会社さんのほうがコスパがいいですね。

紙は厚手すぎると封をするシールとして使ったときに剥がれやすくなるので、70Kだとちょっと厚いです。
逆にフレークシールのように、商品自体をめくるものは厚さが シール本体>剥離紙でないと大変めくりにくいので70Kのほうがよいでしょう。
紙については良い紙を知っている方いたら、教えてほしいです!

さてさて、その他、試作の際に気にしていることは、下記の様な点です。

  • 時間・費用・手間の面で生産しやすいか
  • お客さまが手に取りやすい見た目か、デザインか
  • 完成度ができるだけ高く見えるか(価格の妥当性は担保できるか)

3. ブラッシュアップ⇒完成、価格の決定

モックの作成、デザインへの反映が終わったら、細部のブラッシュアップです。
適宜夫の本質的質問をクリアしつつ、デザインしていきます。作ってるとどうしてもアツくなるので他の人に見てもらうのも大事です。

カッティングマシンについて

できるだけカットがずれないように、印刷したものと位置合わせをがんばります。1カットパターン最低でも5枚ぐらい紙を使いました。


今の所注意点は下記の通りです。

  • カット線がどうしても1mm程度ずれるため、絵柄は2mm程度の余裕がほしい。
  • カッティングマシンは鋭角カットが苦手なので、できるだけパスをきれいにする。⇒スムーズツールを使う
  • カッティングマシンの刃ので具合は1枚毎に切れ方が違ったりするので、こまめに面倒を見る。
  • 自動刃出しツールが有る場合は、手動にしたほうが刃のズレが少なく、結果的に安定したカットができる&時間短縮になる。

ちなみに、気にしないでほかっておくと突然のフレークシールになったりします。ひーん。


1枚ずつ機械に位置合わせした上で手差ししてあげる必要があるので、数分おきに席を立ったり、カッターの調整をします。

デザインについて

これは個人の描きたいものを描くことになるので、多くは触れません。
今回はテーマに沿って、リボンやハート、花を入れています。
プレゼントにしたときにもらってかわいいな!という印象を持ってもらいたいなと思って絵を描きました。
文鳥を飼っていないのに、文鳥を飼っている人に見てもらうわけですから、緊張です…。恐縮です…。
もちもちした文鳥好きです・・・(こくはく

なお、全体のバランスを見て完成版では削除した絵というのもあります。

製本について

製本、及び、切り取り線を入れるのは、裁断機を利用します。
切り取って人に渡せるのも魅力の一つにしたいな~と考えていたとき、家にあったカッターに、切り取り線用刃がついていたことを思い出し、利用しました。


製本は、裁断機で裁断しながら行います。シール紙なのですぐにカッターがベッタベタになります。
適宜刃をきれいにしながら製本します。

参考
ベタベタしてしまったはさみを復活させたいマイナビニュース

量産する、値段を考える

20冊まとめて作り、時間を計測します。
印刷よりも、カッティングマシンに紙をセット⇒カット⇒確認して次または調整をするのに結構時間がかかります。
すべて行うのに、はじめての段階で大体8時間かかりました。そうです、1日がかりです。
慣れてくると7,8割ぐらいの時間でできそうですし、カットしている間はちょびちょびとデザイン作業ぐらいならできそうです。

仮に単価を600円とすると20冊*600円=全部売れて約6時間労働で12000円の売上、しかもここから紙の原価とネット通販販売手数料(約15%)を引くと、残る人件費は・・・。生きていくにはなかなかつらそうです。
商品開発にかかった時間も結構あります。

一方でシールというコモディティ化したものに、そんなに高いお金は払えないということもあります。
実際に、すみっコぐらしのシールブックは、税別680円。ネットのレビューには「子供に買ったけど、小さくて高い!」というネガティブレビューもついています。ここまで作ってみると税別680円でちゃんと利益だしてて、やっぱりすみっコぐらし様のロットと資本力スゲー!低価格!って思うんですが、普通の人は作って確認しないですもんね、わかります。

悩んだ結果、700円という値段を設定することにしました。実は、手間を考えるとちょっと安いかな、と思っています。
価格は一番悩むところなので、これからまた変更するかもしれません。
売れたらシールを印刷屋さんに頼んでコストカットして量産…もまた夢ですね。
そうなると良いな~と思いながら価格の設定を終了します。

価格決定については、minneさんのサイトによくまとまっているので、悩む方は参考にされると良いと思います。


参考
ちょうどいい販売価格のつけ方minne

かんせい!

あとは、ネット販売用の写真を撮って完成です。かんせい!長い記事にお付き合いありがとうございました。

ありがとうを伝える、なめらか文鳥のステッカーブックのご購入はこちらから

追記(なめらかフレンズのブックについて)

なめらかフレンズのステッカーブックも作成しました。
特に、フクロウさんのデザイン過程について、追記します。

フクロウさんは実は昔からオリジナルからクターとして描いてきました。
現在販売しているものだと、ほうじ茶にいます。
名前がなかったのですが、形状がなめらかなので、なめらかフレンズに加入していただきました。(!)

ラフについては左端をご覧ください。
もともとなにかに依拠してフクロウを描いたわけではなかったのですが、今回、実在の鳥に寄せて描いたステッカーブックだったため、シロフクロウに寄せてビジュアルを変更しました。(中央)
この時点で、夫に見せたところ、「かわいさがたりない。森のヌシ的な可愛さが必要。もっと重心は下なのではないか」という指摘があり、右端のように変更されました。
湧き出る可愛さ!!
こうしてフクロウさんは変遷したのでした…。今日も夫に感謝…。